ちょっといい豊中の飲み水を見つけに行こかバスツアー

第10回記念特別企画

2010年11月5日(金)9時30分出発〜17時解散


* 11月5日企画屋本舗の第10回ウォーク特別企画として募集したバスツアーは、早ばやと20人の定員に達し、キャンセル待ち数人という人気だった。
近畿1400万人の飲み水の源である琵琶湖の水についてどんな学習、どんな体験が出来るのか? 皆ワクワクしてバスに乗り込み9時30分定刻発車。 一路琵琶湖からただ一本流れ出る川、瀬田川の洗堰へと向う。

*  車中では早速会員でもある講師の中村義世さんのお話が始まる。 中村氏曰く、「今日のこのバスを、むかし京都伏見から大阪天満を往来した三十 石舟に見たてて、淀川をさかのぼることにします。 どうぞ宜しくお付き合いください」と。 中村劇場のはじまり、はじまり!
 かつて豊中は「月夜に田んぼが焼ける」といわれたほど水に不自由していたことや、今は豊中市民の飲み水の約10%が猪名川からの取水で、 あとの90%は琵琶湖・淀川からの取水であることなどに加え、平成10年度から高度処理水になり臭いも少なく、 より安全でおいしい水が供給されるようになったことなど、さすが10年前まで水道局でお仕事をされていた経験から水の話は尽きない。
川の話や橋の話に加え、歴史や文学にも詳しくて、バスが通る道中の歴史の裏話や百人一首の句から、 武将の辞世の句まで次から次へと話が飛び出し、とまらな〜い。
あっという間に瀬田西インターを出て瀬田の洗堰をわたり、最初の見学地であるアクア琵琶に到着。

   
明治に造られた土木遺産南郷洗堰(旧洗堰)   アクア琵琶

* ここは琵琶湖の水の恵みや歴史、自然などを体験しながら学習する施設。 まず、エントランスホールで巨大な流域図の上に立ち、 琵琶湖の基準水位85メートルが大阪城の天守閣と同じ高さということを聞いてビックリ。高いんだ〜。
その水位や水量を調節するため、昔は人力で100sもある檜の角材を洗堰に上げたり下げたりしていた。 水圧もあって開けるのにも、閉じるのに長時間かかったそうだ。 1 階から2階にかけてその様子が模型で再現されている。昔の人はすごかったな〜。

* その他琵琶湖にすむ魚や、よく起きた洪水などの原因や治水・利水の歴史等はもとより、不思議な水の流れ等も模型や映像で学べるコーナーもあり、 子どもならずともいちいち感心しながらボタンを押して楽しんだ。

     
旧洗堰は人力で開閉作業をしていた    アクア琵琶館の展示から

* そのあと外に出ていよいよお待ちかねの雨体験。名乗りを上げたのは9人で、何と女性ばかり。 男性には借り物のカッパが小さかったようだ。とりわけ熱心な女性は家からマイ長靴を持参されており、どんなにかこの体験を楽しみにして来られたのかがよくわかった。 カッパ、長靴、傘を着用しいよいよ小雨から。次に1時間35ミリの強雨。 そして国内最大の豪雨180ミリに。いよいよ世界最大の1時間600ミリの超豪雨。傘をしっかり握りしめ、皆不安な顔、顔、顔。あっという間に雨はバケツにあふれ、 雷や光の効果もあり、痛いほどの雨のすごさを体験できた。興味しんしんの体験を終えるとちょうどお昼時、旧洗堰を見ながら、思い思いの場所で持参したお弁当タイム。 秋風が気持よく、穏やかな瀬田川の流れがきらめくなか、まず前半の見学を終える。

     
雨体験室。小雨から超豪雨まで体験できる    琵琶湖の水位グラフ〜明治から現代まで

* 次は京都の南禅寺近くにある琵琶湖疏水記念館へと向う。 道中、再び中村氏の興味ある話は続く。琵琶湖疎水の取水口近くまでバスを走らせてもらうと、いやがうえにも次の見学先の疎水について関心が高まる。 そのあと国道1号線から逢坂山を越え、京都の街が眼下に見える蹴上の坂を降りたところが、これから見学する記念館。おりしも社会見学の小学生と同時入館となり、 あまりゆっくりと見学できなかったのは残念だった。
明治時代、天皇の遷都で意気消沈していた京都の活性化は大きな課題であった。また水不足が問題になっていた。 当時の北垣知事は琵琶湖から疏水を引くことでこれを解決しようとかんがえた。結果、疎水は飲料はもちろん水運、かんがい用や防火水に利用。 あと水力発電で市電を走らせ、京都の街に電灯がともることにもなるようなアッと驚く大事業を、工部大学生(現東京大学)の若い田辺朔朗を起用して事業を完成させた。 その鋭断とさまざまな人々の努力には頭が下がる思いだ。

     
琵琶湖疏水博物館からのながめ   水力発電所で使われたベルドン式水車

* 疏水記念館の地下から、今度はその疏水を利用して荷物を運んだインクライン(傾斜鉄道)を散策する。 一見なだらかそうな道はかなりの坂道で、足もとの敷石にも注意しながら登っていく。まだ紅葉には少し間があるものの、ひと足早い桜紅葉に心がやすらぎ、時を忘れる。 30石舟や田辺朔朗の像、二つの疎水の合流地点、慰霊塔、新旧の発電所などを見ながら緑の南禅寺の水路閣に降り立った。 水路閣上には疎水の豊かな水が哲学の道方向に流れている。 「もう少し京都でゆっくりしたかった」という声もある中で、名残おしいが現地をあとにする。
今回私たちの生活に欠かせない水の源をたずねるバスツアーであったが、天候にも恵まれ、「今度は是非、桜のころにもう一度この企画をして欲しい」 「水の大切さを再認識した」など、車中では話が盛り上がっていた。
水のことにとどまらず、歴史・文学など色んなお話をしてくださった講師の中村さんに感謝。 素晴らしい夕焼けの中、5時ジャストに豊中帰着。自然にホホがゆるむ素晴らしい一日であった。(今井文子)


     
インクライン(傾斜鉄道)をのぼる小学生たち   インクラインの台車と復元された30石舟

     
第1・第2疎水の合流地点の蹴上ダム   ローマ水道をほうふつとさせる水路閣(南禅寺境内)

     
水路閣の上部を流れる疎水   楽しい思い出とともに南禅寺をあとにする参加者